課題発見の目
弊社で関わっている企業に、小集団による改善活動が定着している企業の従業員と、改善活動が行われていない企業の従業員が一緒に働いている会社があります。それぞれの従業員を比べた時、最も差がつくのが「課題発見の目」です。
同じ作業を見ても、改善活動が日頃から行われている企業の従業員は自ら課題を見つけ、改善テーマとして掲げます。また課題を発見した時点である程度解決策も浮かんでいるため、解決プロセスがスムーズです。
改善活動を行っていない企業の従業員は、なかなか課題を出すことができません。何とか絞り出しても漠然とした課題となり、原因を割り出すことに苦労します。
これは他社の経営支援を行う際も同じです。
日頃から改善活動を行っていない人は、中々診断企業の課題を発見することが出来ません。
弊社の実務補習では診断士資格を更新される方とこれから登録される方が一緒になって企業を診断します。受講希望者の中でこれから登録される方から、「診断経験が少ない(あるいは無い)。やっていけるか不安だ」という声を頂きます。確かに診断経験は提案内容を左右する一つかもしれません。しかし重要なのは診断経験よりも、その人が「企業にいる間にどれくらい(どのような)問題解決をしてきたか」の方です。自身の経験の応用により、他社の経営を改善するポイントを発見することが出来るからです。
製造業で言えば、大きなポイントはQ(クオリティー、不良の削減や歩留まりの向上)とD(デリバリー、製造リードタイムの短縮)です。
Qを上げ、Dを下げることでC(原価)が下がります。また不良が減れば顧客クレームへの対応や手直し等計画外の仕事が減りますし、製造リードタイムが短縮すれば同じ数の製造をしても余分の時間を持つことが出来ます。それらは職場に余裕を生み、従業員のストレスを減らし、定着率の向上にもつながります。
前述した経営改善が定着している企業の従業員は、それらを理解しています。彼らは最終的な成果を金額で表す習慣から、改善活動が最終的に原価を下げる活動であることを理解しています。また、一度行った改善活動は職場に定着させなければ意味が無いこともよく理解しています。彼らは他社の製造を見ても改善点を挙げることが出来るでしょう。
将来的に独立を考えている方は、独立を意識してから準備を始めるのではなく、企業にいる間に数多くの改善や問題解決を行うことをお勧めします。多くの場合、支援現場で役に立つのは勉強してきた理論ではなく自分で問題解決を行ってきた経験です。
その経験が問題解決能力と「課題発見の目」を養います。